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【行政書士が解説】医療機器を日本で売るには何が必要? 製造販売業許可・製造業登録・品目手続の違いを解説

こんにちは。行政書士の孔です。

「海外で医療機器を作っているので、日本でもそのまま販売できるはず」
「まずは工場の登録をすれば十分なのでは?」
日本進出を検討する海外事業者様や新規参入される事業者様から、このような相談をよく見かけます。

ですが、日本の医療機器規制では、「会社として市場に出す立場」と「実際に製造する場所」と「品目ごとの承認・認証・届出」が、別の制度として整理されています。ここを最初に取り違えると、準備の順番も、必要な体制も、想定コストも大きくずれてしまいます。

目次

新規参入される事業者がなぜここで止まるのか


日本の医療機器制度では、少なくとも次の3つを分けて考える必要があります。1つは会社レベルの「医療機器製造販売業許可」、2つ目は製造所レベルの「製造業登録」や「外国製造業者登録」、3つ目は製品レベルの「承認・認証・届出」です。法令上、医療機器の種類ごとに第一種・第二種・第三種の「医療機器製造販売業許可」が分かれており、別途、クラス分類に応じて品目ごとの手続も異なります。


海外事業者が混乱しやすいのは、「工場がある」「製品がある」「ISO 13485を取っている」ことと、「日本で製造販売できる」ことがそのまま一致しないためです。
たとえば、「海外工場を登録すれば日本で売れる」「品目の認証だけ取ればよい」「ディストリビューターがいるから製造販売業許可は不要」といった理解は、案件によっては危険です。まずは、自社が日本でどの立場に立つのかを整理する必要があります。

「製造販売業許可」とは何か

「医療機器製造販売業許可」は、医療機器を日本市場で「製造販売」する主体に求められる会社レベルの許可です。薬機法上、取り扱う医療機器の区分に応じて、
「高度管理医療機器」→「第一種医療機器製造販売業許可」
「管理医療機器」→「第二種医療機器製造販売業許可」
「一般医療機器」→「第三種医療機器製造販売業許可」
と整理されています。申請事項には、法人情報のほか、「薬事に関する業務に責任を有する役員」や「医療機器等総括製造販売責任者」の氏名、組織図、製造管理・品質管理体制に関する書類などが含まれます。


ここで大事なのは、「製造販売業許可」は工場のライセンスではなく、日本市場に対して最終責任を負う会社の枠組みだという点です。
製品を自社工場で作るか、外部に委託するか、海外で製造するかにかかわらず、日本で誰が製造販売業者になるのか、どのクラスの製品を扱うのか、どの責任者を置くのかが先に問題になります。
「うちは工場を持っていないから製造販売業許可は関係ない」という理解は、しばしば誤解です。

「製造業」「外国製造業者登録」「品目手続」との違い

「製造販売業許可」と「製造業登録」は同じではない


医療機器の製造所については、許可制ではなく登録制として整理されており、製造所の登録範囲や登録要否は、実際にどの工程について責任を負っているかで判断されます。厚労省Q&Aでも、「設計」の責任を有する施設が複数あればそれぞれ登録対象となりうること、反対に、設計開発業務の一部を委託しても責任の所在が変わらない場合には委託先施設の登録が不要な場合があることが示されています。


つまり、「製造販売業許可」は会社の話で、「製造業登録」は工場・施設の話です。
この2つをまとめて「工場ライセンス」だと理解してしまうと、設計拠点、主たる組立て、滅菌、出荷判定時の保管場所など、どこまで登録が必要かを見誤りやすくなります。
海外メーカーが最初に直すべき思い込みの1つが、まさにここです。

品目ごとの「承認・認証・届出」と、会社の「許可」は別の話


PMDAは、医療機器の製造販売についてクラス分類に応じて手続が異なると説明しています。
一般医療機器(クラスI)はPMDAへの届出、管理医療機器(クラスII)のうち認証基準のあるものは第三者認証機関による認証、高度管理医療機器(クラスIII・IV)は原則として厚生労働大臣の承認が必要で、PMDAが審査を行います。なお、クラスIIIの一部には認証基準があるものもあります。


ここでのポイントは、「会社の許可」と「製品の手続」は二重構造だということです。
「品目の認証を取れたから、会社としても販売できる」というわけではありませんし、逆に「製造販売業許可を持っているから、どの品目でもすぐ売れる」というわけでもありません。
海外事業者が「ライセンスは取ったのに販売できない」と感じる場面の多くは、この区別が曖昧なまま進んでいるケースです。

「外国製造業者登録」と日本の「製造販売業者」はつながるが、同一ではない


PMDAの案内では、医療機器等の外国製造業者登録には有効期間があり、5年ごとに更新が必要です。更新を逃すと新規登録が必要になります。さらに、関連する様式・申請記録要領では、「選任外国製造医療機器等製造販売業者」という制度名や記載欄が置かれており、外国側の製造所と、日本側の製造販売業者が別の主体として整理されていることが読み取れます。


実務ではここを「海外工場の登録=日本で売る資格」と誤解しがちです。
しかし、制度上は、外国製造所の問題と、日本国内で誰が製造販売業者として責任を負うのかという問題は、密接に関連しつつも別レイヤーです。
たとえば「自社工場は海外にあるが、日本での製造販売業者は別会社」「自社が日本法人を立てるのか、既存の日本側パートナーを使うのか」といった設計は、最初に整理しないと後工程が全部ぶれます。

クラス別(一般・管理・高度管理)の手続差


PMDAの説明によれば、一般医療機器(クラスI)は届出、管理医療機器(クラスII)は認証基準のあるものについて第三者認証、高度管理医療機器(クラスIII・IV)は原則として承認という整理です。クラスIIIの一部は認証基準があるため、個別確認が必要です。


海外事業者・新規参入者は、まず「製品が何クラスか」を確認したくなりますが、本当はその前後で次の3点を同時に見るべきです。
1つ目は「日本で誰が製造販売業者になるか」、2つ目は「その会社に必要な製造販売業許可の種別は何か」、3つ目は「対象品目が承認・認証・届出のどれに入るか」です。
クラスだけ見て進めると、「承認案件なのに会社体制がまだない」「第三者認証に行けると思っていたが基準該当が曖昧」といったズレが起こりやすくなります。PMDA自身も、分類や相談先の整理を案内しています。

海外事業者・新規参入者の代表的な失敗 5つ

失敗1 「製造販売業許可」と「製造業登録」を同じものだと思う


これは最も多い誤解です。
「製造販売業許可」は市場責任を負う会社の許可であり、「製造業登録」は製造所の制度です。設計や主たる組立て、保管の考え方も一律ではなく、責任の所在と実際の工程で見られます。

失敗2 会社の許可より先に品目手続だけ進めてしまう


「まず認証を取ろう」と考えるのは自然ですが、日本で誰が製造販売業者になるのか、どのクラスの製造販売業許可が必要なのかが曖昧だと、後で整合を取り直すことになります。
会社の枠組みと品目手続は、並行してでも切り分けて設計すべきです。

失敗3 「外国製造業者登録」を取ればそのまま販売できると思う


外国製造業者登録は重要ですが、それだけで日本側の製造販売業体制を代替するわけではありません。
様式上も「選任外国製造医療機器等製造販売業者」という概念が置かれており、外国側製造所と日本側の責任主体が分かれていることが分かります。

失敗4 QMS/GVPを「認証・承認の後で考えるもの」だと思う


QMSについては、製造販売業者等がQMS省令第2章・第3章に基づき製造管理・品質管理を行うことが求められています。PMDAも、製造販売業者や登録製造所がQMSに適合しているかを調査すると案内しています。GVPについても、製造販売後安全管理業務手順書に基づき、安全管理責任者や総括製造販売責任者が安全確保措置の評価・決定等を行う仕組みが前提です。


要するに、QMS/GVPは「後から紙で合わせるもの」ではなく、製造販売業許可の土台そのものです。
特に輸入型ビジネスでは、海外製造所の品質情報をどう吸い上げるか、苦情・不具合・回収情報を日本側でどう受けるか、委託先管理をどう設計するかが先に必要になります。

失敗5 「総括製造販売責任者」を名義だけで考えてしまう


製造販売業許可の申請事項にも「医療機器等総括製造販売責任者」が明示されており、資格基準に関する告示も存在します。さらにGVP上、総括製造販売責任者は安全確保措置案の評価・決定に関与する役割を負います。
つまり、「資格がありそうな人を後から1人置けばよい」という話ではありません。
その人が社内でどの権限を持つのか、QMS/GVPの中でどう動くのか、品質・安全情報がどう上がるのかまで見ておかないと、体制としては弱いままです。

事前準備チェックリスト

以下は、海外事業者・新規参入者が最初に確認したい項目です。

製品は本当に「医療機器」か
販売予定品が日本で「医療機器」に該当するか、一般的名称やクラス分類を含めて確認する。分類に迷う場合は個別確認が必要です。

日本で誰が「製造販売業者」になるのか
自社日本法人か、日本側パートナーか、外国特例スキームを使う余地があるかを整理する。外国製造所の登録問題とは別論点です。

必要な「医療機器製造販売業許可」の種別は何か
一般・管理・高度管理のどこまで扱う予定かを決め、第一種・第二種・第三種のどれを前提にするかを確認する。

品目手続は「承認・認証・届出」のどれか
クラス分類だけでなく、認証基準の有無まで確認する。クラスIIIの一部は例外があるため個別確認が必要です。

製造所はどこまで登録対象か
設計、主たる組立て、滅菌、出荷判定時保管など、どの施設が登録対象かを工程ごとに整理する。委託先があれば責任分担も明確にする。

QMS/GVP体制は組めるか
QMS省令に基づく品質管理監督システムと、GVP省令に基づく製造販売後安全管理の手順・人員・記録体制を持てるかを確認する。

総括製造販売責任者等の人選は可能か
資格基準に合うかだけでなく、実際に社内で機能する配置にできるかを確認する。細かい資格要件は案件ごとに個別確認が必要です。

申請窓口とPMDAの役割を混同していないか
製造販売業許可の申請様式は都道府県知事・保健所設置市長・特別区長宛の様式として示されている一方、PMDAは承認審査やQMS適合性調査、相談窓口等で大きな役割を持ちます。案件ごとにどこに何を出すのかを切り分けることが重要です。

専門家相談が必要なケース


制度上、クラス分類、承認・認証・届出の区分、外国製造所の登録、QMS適合性調査、製造販売業許可の種別などは別々に確認が必要です。PMDAも、分類や相談先について個別相談窓口を案内しています。

次のような場合は、早めに専門家に相談した方が安全です。

  • 日本法人を立てるべきか、既存の日本側事業者を使うべきか迷っている
  • 製品がクラスIIかクラスIIIか、あるいは認証基準該当かが曖昧
  • 海外工場が複数あり、どの施設が登録対象か整理できない
  • 総括製造販売責任者やQMS/GVP体制の組み方に不安がある
  • 「外国製造業者登録」や「選任外国製造医療機器等製造販売業者」の関係が理解しづらい
    こうした案件は、最初の設計を誤ると後から大きく手戻りしやすいです。

まとめ


日本で医療機器を販売するには、会社レベルの「医療機器製造販売業許可」、施設レベルの「製造業登録」や「外国製造業者登録」、製品レベルの「承認・認証・届出」を分けて考える必要があります。また、QMS省令とGVP省令に基づく体制、そして「総括製造販売責任者」を含む組織要件が重要です。


海外事業者・新規参入者にとっての出発点は、「どの許可が必要か」をいきなり決めることではありません。
まずは、
「誰が日本で製造販売業者になるのか」
「製品はどのクラスで、品目手続は何になるのか」
「海外工場のうち、どこが登録対象か」
「QMS/GVPと責任者体制を本当に組めるのか」
を順番に整理することです。
この整理ができれば、自社がどこから検討すべきかが見えてきます。逆にここが曖昧なままだと、許可取得以前に設計ミスが起きやすくなります。


良くあるFAQ 7つ

Q1. 海外工場がISO 13485を取得していれば、日本の「製造販売業許可」は不要ですか。

必ずしもそうではありません。ISO 13485と、日本の「医療機器製造販売業許可」は同じ制度ではありません。日本では、会社として市場責任を負う「製造販売業許可」と、QMS適合性調査や製造所登録などを切り分けて見ます。個別スキームの確認が必要です。

Q2. 「製造販売業許可」と「製造業登録」はどちらを先に取るべきですか。

案件ごとに異なりますが、少なくとも両者は別制度です。一般論としては、日本で誰が製造販売業者になるのか、どのクラスの品目を扱うのか、どの施設が登録対象かを先に整理するのが安全です。

Q3. 海外メーカーは自社で日本の「製造販売業者」になれますか。

一般論としては、日本国内の製造販売業体制の整備が問題になりますが、外国特例承認や「選任外国製造医療機器等製造販売業者」に関わる制度もあるため、一律には言えません。自社スキームごとの確認が必要です。

Q4. クラスIIなら必ず第三者認証で進められますか。

そうとは限りません。PMDAは、管理医療機器(クラスII)のうち「認証基準のあるもの」は第三者認証と案内しています。基準該当性の確認が必要です。

Q5. クラスIIIは必ず承認ですか。

原則は承認ですが、PMDAはクラスIIIのうち認証基準のあるものについて第三者認証が可能と案内しています。したがって、個別品目ごとの確認が必要です。

Q6. 「総括製造販売責任者」は外部委託や名義貸しのような形でも対応できますか。

少なくとも、申請書上の記載対象であり、GVP上も安全確保措置の評価・決定等に関与する役割があります。名義だけで足りると考えるのは危険です。具体的な配置や兼務の可否は個別確認が必要です。

Q7. PMDAと自治体、どちらに相談すればよいですか。

製造販売業許可の実務窓口は自治体側で確認する場面がありますが、PMDAは承認審査、QMS適合性調査、分類や相談窓口などで重要な役割を担います。相談先は論点ごとに切り分ける必要があります。


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